1999

2012年06月14日

「1999」終章 - 第3話「さいごのたたかい(3)」

第3話「さいごのたたかい(3)」

 しばらくの間長い通路を進んだ。通路はひどく入り組んでおり、何度も右折左折を繰り返した。殺風景な通路だ。一切の装飾が排除されている。どちらを向いても継ぎ目のない壁が続いている。天井に一定間隔でダクトが設けられている。ダクトの中で甲高い音を立ててファンが回転しており、この深い穴倉に酸素を送り込んでいる。
 通路は恐ろしく清潔に保たれていた。塵ひとつ見当たらない。フロア全体が無菌室状態に保たれているようだった。室温、湿度も一定に調節されている。肌に感じる空気の質が全く変化しない。
 
 通路の終りにはドアがあった。ドアは透明な素材でできており、中の様子を伺うことができる。ドアの向こうには黒いものが等間隔に並んでいた。
 

 <トウシバ・サトル 人間 男>を認識しました。
 ロックを解除します。


 
 イントネーションの狂った機械的な女の声が言った。コンピューターの合成音声だ。
 鈍い音を立て、ゆっくりとドアが開いた。
 
 僕は部屋の中に入った。
 
 
 そこはサーバ・ルームだった。すごい数のマシンだ。マシン同士はケーブルで繋がれており、LEDが猛烈なスピードで明滅を繰り返している。どうやらマシンは一つの目的を達成するために設置されているようだった。 だが、一体何のために?地球シミュレータだってこれだけのマシンは使わない。
 
 マシンの間をすり抜けるように歩いた。
 
 部屋の突き当たりに到達した。そこには筐体が置かれていた。メルティ・ギアだ。間違いない。これはGaraxyに置いてあったものだ。モニターについたひっかき傷、側面に貼りついている時代遅れの萌えキャラのシール、全てが寸分違わない。
 筺体には無数のケーブルが接続されていた。
 
 
 
「久しぶりだな、柿原。」

 僕は筺体に話しかけた。

 筺体は沈黙を保ったままだ。それでも構わず話し続ける。

「これがお前の言う〈後戻りのきかない選択〉か。」



(^-^)



 モニターに映っていたゲーム画面が消え、白い文字が現れた。



hisasi buri
genki siteta ?




「それなりにな。井上もよろしくやってる。お前の実家を訪ねたよ。更地になってた。一体何があった?」



(-_-)



「答えたくないか。まあいい。どのみちゲームは終わりだ。じきにエンディングロールが流れてfin、だ。苦労の割にあっさりしたもんだ。
 お前がいなくなってから随分と色々なことを考えたよ。一体何だったんだろうな、僕たちは。夢中になったもの、全てを賭けられると感じたものは何もかも消えていった。世界は僕達と関係のないところで回り始めてる。
 分からなくもないんだ、お前の気持ち―――僕もそういう気分になることはある。けど駄目だ。どうしようもないんだ。時の流れの中で失ったものを取り戻すことはできない。やせ我慢だろうが何だろうが、新しいものに乗っかって生きていくしかないんだ。例えそれが偽物にしか思えなくても。
 何が本物で何が偽物かなんて分かりっこない。僕たちが本物と信じたこれだって、今じゃ時代遅れのポンコツに過ぎない。近頃はそれでいいんじゃないかって思ってる。」



dare mo boku wo wakatte kurenai



「確かにそうかもしれない。
だが、この薄暗い穴倉がお前の理想郷だっていうなら、僕はついていけない。そこまで絶望してないんだ。まだ諦めたわけじゃない。お前からすると甘い考えかもしれないけどな。道はあるような気がしてる。きっと探し方が足りないだけだ。
時間は沢山ある。急いでるわけでもない。だから、のんびりやろうと思ってる。」



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 モニターは呪文のようなアルファベットで埋め尽くされた。周りを取り囲むマシンのファンが猛烈に回転している。周囲の温度が上がっていくのが分かる。


「そろそろ終わりにしよう。メルティ・ギアに生まれ変わってくれたのは好都合だった。こいつで決着をつけようぜ。
お前が勝ったら僕は何でも言うことを聞く。大魔王でも何でもやってやる。
だが、僕が勝ったら――――

この世から消えてくれ。」



( ̄ー ̄)

iikedo
boku ni kateru to omotteru no?




「やってみなきゃわからんよ。」
 僕は筺体の前の椅子に座った。


 確かにこの勝負、柿原のほうに圧倒的に分があった。僕と奴の戦績は6829戦中、15勝6801敗13引き分けだ。統計的に見れば僕の敗北は決定的だ。それでも僕には勝算があった。
 残念ながら僕は勝つだろう。何故ならば、これは柿原であって柿原ではない。




 ここにいるのは、ただの抜け殻だ。



posted by 魔王源 at 10:11| Comment(0) | 第1章
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